片づけられないお部屋ケースストーリー「親友との別れ」

晴れた日の出会い

天気の良い日の訪問。

カーテンは閉められ湿気が酷く、ネズミの糞等が散乱するお部屋でした。
単身の男性がお住まいのお部屋は地域包括支援センターからのご紹介で伺いました。

緊急入院の可能性が高いこと。
長い入院または入退院後の介護を考えると、1週間以内にお部屋のお片付けが必要であること。

そして荷物とゴミが混在し、1メートル以上のゴミの山もあるお部屋であること。

私たちは見積りをとり、数日後に再度伺いました。

キーアイテムと昔の想い出

部屋に入ると、 お客様は糞尿の汚れのついた布団に正座して同じ言葉を繰り返しました。

「俺はもう死ぬだけだ」
「ゴキブリが唯一の友達なんだよ」
「もういいよ」

私たちはいつも通り、お客様の繰り返しの会話に相槌を打ち
談笑を交えながらお片付けを進めていきました。

作業を進めていく中で一つの疑問が湧いてきました。

「安全カミソリ・消臭剤・スーツ…。なぜこんなにあるんだろう?」

1メートル強の高さのモノでできた階層には 同じ間隔で、
安全カミソリ、消臭剤、そしてよれよれのスーツが混ざっていました。

 「何でこんなにカミソリあるんですか?」

私は聞きました。 すると、カミソリを一つ手に取りながら、お客様は言いました。

「俺はこう見えても昔は腕利きのトラック運転手だったんだよ。
 運転手でもよ、営業の時はスーツ着てたんだよ」

「ちゃんと髭沿って、スーツきて外に出てたんだ」

「今じゃ身体が辛くてよ。トイレが間に合わないんだよ。
 悔しいよ。消臭剤かけて迷惑かけないようにしてるんだよ」

未来計画

そのお話を聞いて、3つのアイテムの謎が解けました。

「身体の事はわかんないですけど、僕ら片づけは出来ます。
 お部屋キレイにして、身体治して、営業また行ったら良いじゃないですか」

「まさか。オレが!? これからまた運転手?」

苦笑いをしていたお客様の目に、みるみる力が湧いてきました。

「そうだな。ゴキブリは友達だったけど、成仏させるか。
 身体元気にして、やってみるか」

お客様との距離は近くなり、片づけはより一層進んでいきました。
作業が終了し、気がつくと夜になっていました。
部屋のモノは整理され、1トンのゴミが外に出されました。

カーテンは開けられ、久しぶりに玄関へと新しい空気が抜けていきました。

「お兄ちゃん達、本当にありがとう。
 感謝します。身体治してくるよ」

「病院から帰ったらキレイな布団で寝たいな。
 買い物代わりにお願いできるかな?」

「ここにくる人は皆親切でさ。
 病院の人達も親切そうなんだ。ありがたいよ」

” ゴミ屋敷 ” と社会的に言われるようなお部屋に住んでいたのは、
キレイ好きで腕利きのトラック運転手でした。

笑顔の素敵な、とても実直な方でした。

お客様は大好きなタバコを口にくわえ、 笑顔で手を振り、私たちを見送ってくれました。

エピローグ

そしてその一週間後のことです。
関係者の方から、お客様がご自宅で亡くなられたとの連絡を頂きました。

「彼はいわゆる孤独死ではなく、
 関係者に見守られながらの死を迎えられました」

「身体を元気にして、新しい布団で寝たいと、
 前向きに生き抜こうとされていました」

後日、関係者の皆さまから御礼と共にお話を聞いて、素直に喜びを覚えました。
また、それと同時にお客様とのお別れに深い深い悲しみを抱きました。

「お客様は死を迎えたのではなく、人生を生き抜いたんだ」

私たちはそう強く感じました。 片づけたくても片づけられないお部屋。
モノだらけのお部屋に本当に住みたい方は、ごく僅かなのではないでしょうか。

” 会話 ” を通して、私たちはこの社会課題解決に取り組んでおります。
ひとりでも多くの方が、その人らしく笑顔で暮らせるように。

  (代表取締役社長 古市盛久)

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